「恋って、認めて。先生」
やっぱり!顔立ちが……。特に目元や顔の輪郭が永田先生ととてもよく似ている。
永田先生のお母様を応接スペースのソファに案内し、私は急いでお茶の用意をした。まさかこんな形で永田先生のご家族に会うことになるなんて。
「すぐに永田先生をお呼びしますね」
「ありがとう。でもいいのよ。すぐにおいとまするから」
「そうですか……」
「ここもだいぶ変わったわね」
永田先生のお母様は目を細め切なげに職員室を見渡す。
「私達のいた頃は、文化祭中も外部の生徒は入れなかったの」
「そうだったんですね。ということは、お母様も以前こちらで教師をされていたのですか?」
「ええ。ずいぶん昔の話になるけど、それもあって、数年に一度はここにこうして顔を出すようにしているのよ。私もあなたくらいの歳の頃はここで英語を教えていたわ」
「そうだったんですか…!こちらで英語教師を……」
凛々しくかっこいい彼女の雰囲気に、納得した瞬間だった。
「それでは、今は別の学校で英語を?」
「ええ。今は北高で働かせてもらっているわ」
北高!近い……!しかも、大宮君の学校だ。
「びっくりしました。永田先生にはいつも良くしていただいて感謝しています。そのお母様も教師でいらっしゃるなんて、本当にすごいですよね」
「そう。そんな風に言ってくれる方がそばにいるなんて、永斗は思ったよりちゃんとやっているのね」
優しい口調でイタズラな瞳をするお母様は、やっぱりどこか永田先生と似ていた。
「長居するとご迷惑になるし、私ももう昼休みが終わるから失礼しますね」
「大したおかまいもできずすみません」
「気にしないで?あなたもお忙しいのに相手をしてくれてありがとう」
お母様はゆっくり立ち上がる。
「申し訳ないのだけど、ひとつ、永斗に伝言をお願いしてもいいかしら?」
「はい、私でよければ聞きます」
「ありがとう」
その後私はスマホで直接永田先生に電話し、職員室に来てもらった。
「そっか、母さん来たんだ。大城先生は会うの初めてだっけ。ごめんな、一人で相手させて」
「大丈夫ですよ。あ、これお母様からいただきました。皆さんで召し上がるようにって」
預かった菓子折りを永田先生に渡すと、お母様に頼まれていた伝言を永田先生に伝えた。
「実家のおじいさま、だいぶ元気になられたそうですね。年末年始に家族旅行がしたいから近いうちに永田先生にも顔を出してほしいとのことです」
「そんなこと、直接電話で言ってきたらいいのに、なんでわざわざ大城先生に」