「恋って、認めて。先生」
「もう、永田先生と付き合っちゃえばー?お似合いじゃん!」
幼なじみの男友達・佐木崎琉生(さきざき・るい)が興奮気味に言った。その横で、高校からの女友達・枝葉純菜(えば・じゅんな)が、
「琉生はすぐそういう話に持っていくんだから。皆が皆、琉生みたいに恋愛体質なわけじゃないんだよ」
と、やんわりツッコミを入れる。
琉生と純菜はかけがえのない友達だ。
恋愛体質で同性愛者の男友達・琉生と、ほのぼの系でサバサバしている女友達・純菜。ここ数年、このメンバーで集まるのが習慣になっている。
大学を出てそれぞれ就職を果たした後も、二人はこうしてちょくちょく私の家に遊びに来てくれる。
就職と同時に実家を出て一人暮らしを始めて良かったと、こういう時しみじみ思う。仕事で疲れたり落ち込むことがあっても、この二人といると元気になれるから。
「飛星も、学生時代はよく名前呼び間違えられてたもんね。私も、最初何て読むのか分からなかったし」
高校からの同窓生・純菜の言葉に、私はうなずいた。
「だよね。バイトの応募する時とかも、電話口で何回も名前聞き返されるし……。我ながら厄介な名前だと思うよ」
「おれっちは、飛星の名前に違和感なんてないけどね~」
「琉生と飛星は幼なじみだもんね。それが自然か~」
得意気に言う琉生に、純菜がふむふむと納得している。
比奈守君も、私と似たような思いをしてきたのかもしれない。
――永田先生に共感してもらい、友達と楽しい時間を過ごしても、なぜだか比奈守君のことが頭から離れなかった。
「大丈夫だよ。飛星に悪気はなかったんだし、ささいなことだし、その比奈守?って子も、その件はすぐ忘れてくれるよ」
純菜が優しく励ましてくれる。琉生も力強くうなずき、
「そうそう!そんなことでいつまでもグチグチ言うような小さい男、放っておけばいいんだよ。無視無視!」
「さすがに、生徒だから完全無視は無理だろうけど……。うまくいくように頑張るよ!二人のおかげで元気出てきたっ!ありがとう!」
その夜は、夕食にと用意しておいた豆乳鍋をささっと用意し、二人に振る舞った。