「恋って、認めて。先生」
ずっと誰にも言えなかった気持ちを言えてスッキリした。そのはずなのに、胸のどこかがしくしく痛む。本当にこれで良かったのかな?
後悔してる?まさか。これでいいんだよ。比奈守君にはちゃんとした人と恋愛して幸せになってほしい。
なかば自分に言い聞かせるように葛藤していると、
「先生の気持ちが聞けてよかったです」
比奈守君は言った。
「好きな人に気持ち伝えた方がいいって、教えてくれたのは先生です。だから、どうしても言いたかった」
「そっか。そういえばそんなこと言ったね」
「忘れてたんですか?」
「そうじゃないけど、比奈守君の好きな人がまさか私だとは思わなかったから」
「やっぱり先生は鈍いですよね」
「あはは……」
本当、その通りだ。返す言葉もなく、苦笑いするしかなかった。
比奈守君も呆れてるだろうな、と、そう思っていたら、優しく笑い、彼は言った。
「そういうとこも、好きですよ」
「なっ……!何でそうなるの?鈍いのって、短所でしかないと思うんだけど……」
「そんなことないですよ。俺はいいと思ってます」
「またからかう……」
「からかってなんかないですよ」
「そっ、そうだとしても、私には刺激が強すぎるというか、そういうこと言われても何て返したらいいのか分からないんだよ……」
言ってるうちに、だんだん顔が熱くなってくる。顔が赤いの、比奈守君にバレバレだ。恥ずかしい。
比奈守君はこちらに近付き、うつむく私の顔を覗き込んできた。
「困らせてすいません」
「私こそ、気持ちに応えてあげられなくてごめんね」
「謝らないで下さい。いい返事がもらえるなんて、最初から思ってませんでしたから。琉生さんからああいう話も聞いてたし」
「…………」
「俺、何も望んでませんから」
え……?なら、どうして告白なんてしたんだろう?何の目的もなく、ただ本当に、私のアドバイスに従っただけ?
比奈守君の顔を見上げると、ものすごく柔らかい表情と出会う。そんな優しい顔、反則だよ……。告白を断ったことがなかったもののように、比奈守君はあたたかい目をしていた。永田先生とは、だいぶ違う。
「告白して良かったです。授業中には絶対見られない先生の特別な顔がたくさん見れたんで」
「え!?特別なって……?」
「秘密です」
「そんなぁ!!隠されるとよけい気になるよ!」
「いつか俺に振り向いてくれたら、その時に教えてあげます」
比奈守君は小悪魔的微笑を浮かべる。
「なんて、冗談ですよ。もう忘れます。安心して下さい」
「う、うん……」