「恋って、認めて。先生」
いけないいけない!どうも、今日は調子が上がらない。こんなんで授業をしたら、生徒達に迷惑をかけてしまう。元気に頑張ろう!
何とか気合いで午前中を乗り切り、昼休みになった。
昼食を食べ終わると食堂前の自販機で緑茶を買い、中庭のベンチに腰をかけた。ポケットに入れていたスマホを見ると、純菜からラインのメッセージが来ていた。
《今日は仕事早く終わりそう!飛星は?》
《定時に終わるよ》
《なら、今夜は、琉生も誘って焼肉行かない?なんかムショーに肉食べたい気分!》
《いいよ!焼肉久しぶりだね〜!》
《私いい店知ってるから、そこでもいい?》
《任せる♩》
純菜とのやり取りが終わり、スマホをベンチ脇に置いた。
ここ数ヶ月、私のアパートに食材を持ち寄ってご飯を作るのが定番になっていたから、外食が新鮮に感じる(永田先生と行った店はカウントしない方向で)。
焼肉、楽しみだなぁ。二人とは毎日のように会っていたせいか、昨日1日会わなかっただけで、ものすごく懐かしい感じがしてしまう。
緑茶のペットボトルが半分まで減る頃、立ち上がろうとしたら、ラインのメッセージが届いたので、私はもうしばらくそこにいることにした。
純菜か琉生かな?そう思いメッセージを見ると、比奈守君からだった。
《先生、大丈夫?》
何やら、私のことを心配してくれてるらしい。でも、どうして?何と返したらいいのか分からずにいると、続けてこんなメッセージが入ってくる。
《今朝の、田宮のこと》
そんなこと、すっかり忘れていた。田宮君も本気じゃないだろうし、と、軽く受け流していたし。
それに、私にとっては田宮君の件より永田先生の置いていった新聞記事の方が何倍も強烈で……。なのに、比奈守君は今朝のことこんなにも気にしてくれてたんだな。なんて優しいんだろう。
《大丈夫だよ。田宮君も否定してたし、私も気にしないよ》
《ならいいんですけど……》
そこでいったんメッセージは途切れた。
そろそろ、午後の授業の準備をしないと。立ち上がると、もうこないと思った比奈守君からのメッセージが入ってきた。
《夕べのライン、迷惑でしたよね。田宮がからかわれてる時の先生の様子見て、自分のしたこと考えさせられました。もう、連絡しません。気持ち押し付けるようなことして、本当にごめんなさい。》
え……?
比奈守君、待って?違う。そうじゃない。迷惑だなんてちっとも思わなかったよ。ううん、むしろ楽しかった。