「恋って、認めて。先生」
「ごめんね、飛星……!」
そこで、もう一度純菜が謝ってくる。
「もういいよ。過ぎたことだし、二人にも悪気はなかったんだし」
「それもそうなんだけど、違うの……。実は、今向かってる店は……」
純菜が言いかけた時、琉生が車を止めた。
「着いたぞ。何があったか、中でじっくり聞かせてもらうから」
「……うん」
二人の顔を交互に見て、私は琉生についていく。たしか、焼肉屋だよね。そうとは思えないくらい、琉生が足を向けた先はシックな建物だった。黒い外壁。内装も、照明が抑えてあり大人の雰囲気が漂う。焼肉屋というよりオシャレなバーと言う感じだ。
中に入って、私は驚いた。
「いらっしゃいませ」
奥から出てきたのは、比奈守君だったのだ。学校で見る時とは違い、この店の制服を着ている。そのせいか、ぐっと大人びて見えた。純菜が謝ってきたワケや、琉生の陽気さの理由がようやく分かった。
「比奈守君、バイトしてたの?」
「ここ、親がやってる店なんですよ。受験生だし、今年はあんまり手伝わないって言ってあったんですけど、今日は琉生さんから来るって連絡あったから特別に店に出てきたんです」
「そうなんだ。偉いね」
って、琉生と比奈守君はいつの間に連絡取り合うような仲になってたんだろう!?それにもビックリだ。
「おれっちはいいって言ったんだけど、比奈守君のご両親が、家まで車で送り届けたお礼をどうしてもしたいって言ってくれてて。今日二人を連れてきたのも、そのためなんだよ」
なるほど。そういうことだったのか。ということは、今、店内に比奈守君の両親もいるってこと!?
三者面談より先に比奈守君の親に会うことになるなんて、緊張してしまう。でも、そんな心配はいらなかった。
「親は奥で仕事してるので、接客は俺と他のバイトの人達でやってますから、何かあれば声かけて下さいね」
これまでに何度も店のお手伝いをしていたのか、比奈守君はとても慣れた様子で席まで案内してくれた。店内はとても賑わっていて、プライベートな話をしても店の奥にいるご両親には聞こえなさそう。ちょっと安心した。
窓際のテーブル席に通されると、純菜と私は琉生に向き合う形で隣同士に座った。ひととおり注文を終えると、琉生はずいっと身を乗り出し尋ねてくる。
「で?比奈守君の告白に、飛星は何て答えたんだ?」
琉生だけでなく、純菜までもがこっちをジッと見ているのが分かる。
「気持ちは嬉しかったけど、断ったよ」
比奈守君に話したことをそのまま二人に報告する。