「恋って、認めて。先生」
告白を断った後もラインでやり取りしたことや、それももう今日で終わりだと言うことも付け加えて話した。二人は、さっきまでの元気さを失い、しんみりとする。
琉生と純菜は、それぞれこう言った。
「そっか。そこまで前の恋愛がトラウマになってたのか……。比奈守君なら、そういうのどうにかしてくれると思ってたんだけどな、おれっちは」
「飛星の気持ち、分からないでもないな。年下ってだけでも色々考えるのに、相手が生徒となったら、気持ちのままいくわけにはいかないよね。今まで無責任なこと言ってごめんね」
違う。二人は悪くない。私は陽気に言った。
「ううん!二人とこういう話できるの楽しかったし、これで良かったと思ってるし、私は大丈夫だから。せっかく来たんだし、今日はいっぱい食べよ!」
そこへ、私達がオーダーした肉や飲み物を持って比奈守君がやってきた。一度にあんなに大量の品を運べるなんてすごい!感心してしまう。やっぱり、男の子なんだな。
「お待たせいたしました」
「ありがとう」
通路側に座っていた純菜が品を受け取り、テーブルに並べていく。私がそれを手伝っていると、琉生はさっそく肉を焼き始め、比奈守君に言った。
「比奈守君。これからも飛星にラインしてやってよ」
「ちょっと、琉生……!」
何てことを!これじゃあ、比奈守君との間にあったこと全て皆に相談してたのバレバレだよ!そんなの、比奈守君への気持ちバラされたも同然。顔が一気に熱くなる。
「でも……」
ためらう比奈守君を前に、琉生は畳み掛ける。
「大丈夫。おれっちもピアノの先生してるんだけど、生徒とよくメールしたりするし。そういうコミュニケーションも悪くないと思うぜ?飛星も、迷惑がってなんかないからさ」
「そうなんですか?先生」
探るような比奈守君の視線に、私の胸は大きく跳ねた。
「うん!避け合うこともないかな〜って思ってる。比奈守君の勉強、見てあげたいし……」
本気のようで、それはただの口実だった。比奈守君と仲良くするには、勉強という手段しかないと思ったから。
比奈守君の反応を恐々と待っていると、柔らかい笑みを見せ、彼は言った。
「先生が嫌じゃないなら、俺は連絡したいです」
「夕君!こっちいい?」
「はい。今行きます」
バイトの人に呼ばれたので、比奈守君は私達におじぎをしてそちらに行ってしまった。
寂しかった気持ちがすっと消えていく。心が軽い。比奈守君と、また、ラインできるんだ…!
最初はヒヤヒヤしたけど、琉生の協力をとてもありがたく思った。