「恋って、認めて。先生」
比奈守君のまっすぐな言葉を前に、私は告白に応えられなかったことをひどく後悔した。
「比奈守君こそ、いいの?」
胸の片隅で引っかかっていたことを、私は尋ねた。
「気持ちに応えてくれない相手と連絡取り合うなんて、比奈守君にとってはきついんじゃないかなって……」
『きつくないって言ったらウソになるけど……』
言葉を選ぶように間を置き、比奈守君は言った。
『でも、それ以上に、先生との繋がりがあるの、嬉しいから』
「この先ずっとこのままの関係が続くのだとしても?」
『変わりますよ。人間関係って、そういうものでしょ?』
はっきりした言い方だった。比奈守君の声には自信が溢れている。
『人と人の関係って、ずっと同じってことはないですよね。琉生さん達と先生の関係みたいに長く続いて仲良くなることもある。その逆に離れることもあるかもしれないけど、先生と俺はそうならない気がするから』
「どうして、そんなにハッキリ言い切れるの?」
『勘です』
「勘……?」
実にシンプルで分かりやすい答えだった。勘、か。まさか、そう返ってくるとは思わなかった。だからこそ良かったのかもしれない。この時の私には、あれこれ理由を述べられるより簡単な言葉の方が受け止めやすかったから。
『俺、いい加減なことばっかり言ってますよね。先生に一目惚れしたとか。でも、自分の勘、信じてるんで』
「自信あるんだね」
『はい。自分で言うのも何ですけど、俺の勘、けっこう当たるんですよ』
「そうなの?それはすごいね!」
言いながら、私は深く納得していた。比奈守君はたしかに鋭い子だ。永田先生の気持ちも私より先に気付いてたし……。
比奈守君の勘が当たるといいな。そう、心底思った。立場や年齢という壁はあるけれど、それすら乗り越えて近付けるような。そんな未来を想像し、胸が膨らんだ。
話していると、あっと言う間に三十分が経過していた。比奈守君も明日学校がある。そう思い、
「用事はそれだけだった?こんな時間だけど、寝なくて大丈夫?」
恐る恐るそう尋ねると、電話の向こうで比奈守君はクスッと笑った。
『先生って、ホント鈍いですよね』
「え?何でっ?」
『たしかに用件はもう済みましたけど……。電話したい理由なんてひとつしかないじゃないですか。先生の声が聞きたかった。それだけです』
優しい声でそんなことを言われ、私は思わず手からスマホを滑り落としそうになってしまった。ドキドキが止まらない。