「恋って、認めて。先生」
元カレの件に加え、私は、全く魅力を感じられない今の自分にもコンプレックスを持っていた。年齢。
女は年齢を重ねるほど美しくなると言われているけど、それは中身のある人だけだ。私は自分に自信がないし、ただなんとなくでここまで生きてきた凡人だ。秀でた才能もないし人目を集めるような美貌も持ち合わせていない。
比奈守君が私を好きだなんて、やっぱり何かの間違いだ。
比奈守君が今まで付き合ってきた女の子達だって、きっと彼と同い年か同世代の高校生だろう。私より若くて綺麗な肌をしていて、にごりのない心を持っていたんだろう。考えたらみじめになった。
今の私には、好きな人を永遠に惹きつけておく材料も手段もない。そんな状態で心のままに好きだなんて、言えるわけないよーー。
「泣かせてごめんね、先生」
比奈守君はどこか落ち込んだ面持ちで私の涙を拭う。その指の扱いが柔らかくて、胸が苦しくなった。
好きって、言いたい。昔の私なら、ここまでためらうことはなかった気がする。いつの間にか変わり果てていた自分の内面にショックを受ける。琉生や純菜と一緒の時にすら気付かなかった、暗い自分。
「先生の不安全部、消してあげられたらいいのに」
比奈守君は言い、そっと私を抱きしめた。
何も言わずに、ただひたすら抱きしめ合う私達。比奈守君の胸に頬を押し付け、私は声を殺して涙を流したのだった。