「恋って、認めて。先生」
そうだよね。大切な友達がそう言ってくれてるんだ。疑うわけにはいかないし、卑屈にばかりなってたらダメだ。
今すぐ自信を持つのはやっぱり無理だけど、比奈守君自身の言葉をまっすぐ受け止めるように、これからは心がけよう!
二人に話して気持ちが落ち着いたところで、改めてスマホを確認する。比奈守君から何かしらアクションがあるかと思って期待していたけど、悲しいことに彼からの電話もラインも、一切なかった。
「比奈守君、私のこともう嫌になったのかな……」
両手でスマホをにぎりしめ、さっそく弱音を吐いてしまう。そんな私を慰めるためなのか、琉生はテンション高くこんなことを言った。
「一度好きになったら、そんな簡単に嫌いになんかならないって!それに、飛星さ、霧雨の中でキスされたんだろ?比奈守君、やっぱりロールキャベツだったな!」
「ああ!前も言ってたね。ロールキャベツ男子のことだっけ?」
純菜が楽しそうに話にのっかる。
「女に興味ありませんーみたいな清潔感溢れる容姿してるのに、比奈守君って積極的だよな!」
「ちょ、変なこと言わないで?恥ずかしいからっ!」
キスされたこと、琉生に話したのは間違いだったかな?からかわれ、顔が真っ赤になってしまう。琉生は私の反応を見てもなお、得意げにしゃべる。
「男って、プールとか雨とかシャワーとか、水に濡れた女を見ると、セックス中の女を連想するらしいぜ?」
「なっ、せっ……!?」
「ま、おれっちは男専門だからよく分からんが」
強烈な発言の数々。赤面するしかない私に、琉生はしれっと言い放った。
「教師から見て子供でも、18はもう立派な男だせ?あれこれ考えても飛星の場合自爆しそうだし、一回、比奈守君に抱かれてみたら?」
「ちょ!勉強教えてあげるのとはわけが違うんだよ?そんな簡単にできるわけないよ!それに、まだ早過ぎる!」
「早過ぎる、か。飛星も、心のどこかで比奈守君とそうなるの期待してるんじゃないか?」
「してない!仮にも教師だよ?するわけないっ!」
「ま、そういうことにしておいてやるよ」
せっかく薬で落ちついていたのに、変な熱が込み上げておさまらなくなってしまう。
「からかい過ぎだよ、琉生。でも、琉生の言うことも一理あるかも」
それまで私達のやり取りを見ていた純菜が、遠い目をしてしみじみと語った。
「エッチした時の感覚も大事だと思うなぁ。振り返ってみれば、今まで私が付き合ってきた人、全体的にスキンシップが少なかったんだよね。草食系って言うのかな。話は合うし一緒に居て退屈しない人ばかりだったし、だから付き合ったんだけど、キスとかエッチとかに欲がない人ばかりだったから、後腐れせず別れられたのかも。って、私も今琉生の話聞いてて初めて気付いたんだけどね!」
「純菜……」
何気ない雑談の中のひとコマ。純菜の経験談は、私の中に大きな音を立てて落ちてきた。私も昔、そうだったかもしれない。