「恋って、認めて。先生」
琉生は諭すように言った。
「比奈守君は飛星のことを好きで心底興味がある。だからこそ、飛星は彼との触れ合いを心地よく感じたんだよ」
もしそうだったら嬉しい。だけど、今だに鳴らないスマホを見ると、喜ぶのがこわくなってしまう。
「彼から来るのを待ってないで、飛星から行ったらいいんだよ。きっともう、こっちの気持ちは比奈守君に伝わってるんだし」
「……うん!」
「飛星、頑張って!」
純菜も応援してくれる。
比奈守君の今の気持ちは分からないけど、彼との未来を信じたい。一緒に幸せになりたい。自分を好きになりたいし、比奈守君のことを大切にしたい。
大きく深呼吸をし、ラインの画面を開く。比奈守君にメッセージを送ろうとし、指が震える。好きな人と向き合うのは、こんなにも気持ちが高ぶることなんだ……!
私につられて、琉生と純菜も緊張した面持ちでこちらを見守っている。
「できた!送るね!?」
二人に宣言したのと同時に、インターホンの音が響いた。静かだった室内に、それはやけに大きく聞こえてドキリとしてしまう。こんな時間に誰?
二人と顔を見合わせていると、琉生が立ち上がり玄関に向かった。
「体調悪いんだし飛星は休んでろ。不審者かもしれないしおれっちが出る」
こんな時、男友達って本当に頼りになる。純菜と目を合わせホッとしていると、訪問者を相手にした琉生がすっとんきょうな声を上げた。
「比奈守君じゃん!!ビックリした〜!」
琉生の驚きなど気にしていられないというように、比奈守君は口早に言った。
「琉生さん、すいません。先生いますか?」
「うん、いるぜ。ささ、上がって上がって?」
「お邪魔します」
琉生が部屋に戻ってくるのと同時に純菜は立ち上がる。
「琉生、私達はそろそろ帰ろうか。明日も朝早いし」
「そうだな。比奈守君、またな!」
「飛星、お大事に」
ちょうど帰るところでしたというように自然な感じで、琉生と純菜はアパートを出て行った。熱が下がり切っていないせいか、展開に頭がついていかない。
比奈守君は軽くおじぎをして二人を見送ると、こちらに近付いてきた。
「比奈守君、どうして……?」
よく見ると、比奈守君はお見舞いの品を持っている。それを床に置くと、ベッドに座りぼうぜんとする私を抱きしめささやいた。
「先生に会いに来ました」
比奈守君の体温があたたかい。どちらのものか分からない心音。
ますます熱が上がって、平静を保つ自信がなくなってくる。