「恋って、認めて。先生」
幼くてたどたどしいけど、何度かそういう経験がある。彼のはそういうキスだった。それでも私は、比奈守君を欲しいと思った。
彼が、過去に誰かとそういうことをしていてもかまわない。私より年下の元カノが何人いてもいい。今、私だけを見てくれるのならーー。
恥ずかしいけど精一杯、比奈守君のキスに応える。元カレともキスをしたけど、こんなに幸せなものだったかな?自分で思うよりずっと、元カレとの時間は遠くにあるのだと知った。
こういうことをするのは決して初めてじゃない。それなのに、男の人に抱かれるのはこれが初めてかのような錯覚をしてしまいそうだった。私の全てを愛してほしい。その一心で比奈守君とキスを交わしていた。
あんなに抵抗していたのがウソみたいに、途中からは私の方が積極的に動いていた。比奈守君の制服を脱がし上半身裸にさせると、彼の胸に何度も唇を重ねた。比奈守君の体は、そのたび小さく震える。
「先生、意外に大胆だね」
「嫌だった?」
「嬉しいよ。俺も先生のこといっぱい気持ち良くしてあげるから」
「先生じゃないよ。飛星って、呼んで?今だけでいいから……」
この時だけは、自分の立場を忘れたかった。
比奈守君は両手の指先を私の髪に絡ませ、うなずいてくれた。
「分かったよ。飛星」
甘やかな声で私の名前を呼び、彼は私の服を一枚一枚、ゆっくり脱がしていく。その間も深い口づけを交わしながら、私達は言葉を交わした。
「飛星も、俺のこと名前で呼んで?」
「……夕。んっ……」
「もっと見たい。飛星のこと」
「夕になら、見せてもいいよ?」
「他の人には、絶対見せないでね?」
「当たり前だよ」
下着だけの姿にさせられると、途端に体が熱くなった。
「恥ずかしいから、電気消すね?」
「いいですよ。でも、そんなの無駄だと思う」
「やっ……!ダメ、そこは……」
「もっと見せて?飛星のこと」
暗くなった室内に、私達の息遣いだけが響く。不安や未来、立場も忘れて、私はこの時間に集中した。比奈守君のことを全身で感じたい。
体を動かすたびにシーツのこすれる音がする。比奈守君が愛おしげに私の名前を呼ぶ。お互いに裸になり、肌と肌が重なる。夢のような現実に、私の体は、心は、他では感じられない快感を覚えていた。比奈守君も同じだったらいいな。
「飛星、綺麗だよ」
「夕の手、あったかい」
「うん。飛星も……」
比奈守君の手が、唇が、私の全身を愛してくれる。互いに口数が減っていくのに、ちっとも寂しくなかった。比奈守君の視線や触れ方から、好きの気持ちが伝わってきたから……。
「飛星、こんなに俺のこと好きでいてくれてるんだ……。幸せ」
私の秘部を見て、比奈守君は熱のある眼差しをした。優しいキスで何度か私の唇を塞いだ後、彼はそっと私を抱いた。
「つながるよ、飛星」
「うん……」
「優しくするから」
「ううん、いい……。遠慮しないで、ありのままの夕で抱いて?」
「何でそう、可愛いこと言うの?」