「恋って、認めて。先生」
「夕のこと、もっと知りたいから」
「分かった。飛星も我慢しないで?痛かったら言ってね」
はじめはゆっくり私の中を探るようにしていた夕も、こちらの気持ちに気付いたのか、次第に動きを早めて私の奥を貫いた。湿った音を立てて、何度も何度もーー。
はじめから、全く痛くはなかった。むしろ、これ以上の心地よさはないと思えるくらい、彼のことが繰り返し欲しくなった。
「夕……」
「飛星。好きだよ。この気持ち、変わらないから」
「本当に?」
「飛星は?」
「っ……」
「俺のこと、好き?」
切なげな声に反し、比奈守君の抱き方は激しかった。好きって言わせるまで何度も攻める、そう言いたげな腰使い。好きな人とのセックスはこんなに気持ちがいいものなんだ……。
気持ちが満たされ、体中が快感の熱に染められても、私はどうしても好きの一言を比奈守君に言えなかった。口にしたら全てが無くなってしまいそうで……。
「いいよ、気長に待つから」
比奈守君は言い、私の首すじにキスを落とした。
「汗の味がする。飛星の匂いがする。胸も柔らかい。肌もしっとりしてる」
「やめて?そんなこと言われたら恥ずかしいよっ……!」
両手で顔を隠すと、比奈守君は小悪魔のように笑いセクシーな声音でつぶやく。
「これから教室で飛星のこと見るたび、このこと思い出すから」
「どうしてそんな意地悪言うの?」
「飛星が俺のこと好きって認めてくれるまで、こっちもいじめることにした。そうでなくても、忘れられるわけないし」
セリフとは真逆に、比奈守君の心は優しいと感じた。抱き方は激しかったけど、時折私の体を労ってくれる。
「飛星のこと、誰にも渡したくない……」
果てる直前、比奈守君は複雑な表情でたしかにそう言った。
それから私達は、時間を忘れて何度も愛し合った。セックスは、体だけじゃなく心をつなげる行為なのだと、生まれて初めて知った。
朝になってようやく、私達は求め合うことをやめベッドの中で裸のまま抱きしめ合った。
「体調、大丈夫?」
「うん……。ノドの痛みも、いつの間にかなくなってる……」
何度か嬌声を上げているうちに、風邪の症状は治まっていた。
「比奈守君は?大丈夫?」
「はい。平気です。やっぱり俺、丈夫なんですかね」
朝日を目にして、私達は元の呼び方に戻った。冷ややかな現実は私達を日常に引き戻そうとする。