魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
それからは盗賊にも魔物にも出くわすことなくカルサイト村に着き、私たちは一軒の食堂で昼食を取った。食糧不足のせいか、パサパサのパンにバターがちょびっと、ひからびた干し肉と小さなリンゴだけのランチ。
「世界史の授業を思い出すな」
勇飛くんがぽつりと言った。
「どんなこと?」
「ほら、さる高貴な女性が、“百姓には食べるパンがございません”と言われて、“それならケーキを食べればいい”って答えたとかいう話」
「ああ、マリー・アントワネットの言葉だったっけ?」
「うん、でもあれ、実はマリー・アントワネットが言ったんじゃないって説もあるんだよ」
「そうなの?」
「諸説あるけど」
「ふぅん」
そう返事をしたけど、私は期末テストのことを思い出してドキドキしていた。大学附属高校とはいえ、あんまり悪い点数だとお父さんとお母さんに怒られる。
あ、また、お母さんのことを思い出しちゃった。ちょっぴり胸が切なくなって、私は頬を軽く叩いた。
任務に集中しないと。
「セリ?」
「大丈夫!」
心配そうにする勇飛くんに笑って見せると、先へ進むべく彼を促した。