魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「でも、炎や水の力を使って攻撃したり、逆に病気をもたらしたりもするだろ」
「そっか……」
「王国の人たちは魔法使いを蔑むことで、心の平穏を保っている。魔法使いは人間に仕えるものであり、人間に従う存在だからこそ、人間には牙をむかないということなんだ」
「よくわかんないな。そうやって虐(しいた)げたら、逆に魔法使いの反感を買うんじゃない? そして反乱とか起こされたらどうするつもりなんだろう」

 その疑問に勇飛くんが答えるより早く、馬車が再び横付けされた。

「失礼しました。ユウヒ様がそうしろとおっしゃるのなら、魔法使いを乗せても構いません」
「そうか、助かるよ」

 勇飛くんに言われて、御者はへらっとした笑いを浮かべたが、私を見るときはキツイ目つきになった。

「さ、乗って」

 勇飛くんに促されて、私はおそるおそる馬車に乗った。続いて勇飛くんも乗り込み、私たちは狭い馬車に体を寄せ合うようにして座った。

「では、行きますよ」

 御者の声がして、ゆっくりと馬車が走り出した。魔法使いは歓迎されていないとはいえ、これ以上歩かずにすむと思うとホッとする。
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