魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 私は思わずぺぺペッと舌を出した。そんな私を見て、マスター・クマゴンは心底悲しそうな顔をして言う。

「終わりだわ。この国は本当に終わりだわ」

 そんなふうに言われたら私も悲しくなってしまう。

「さっき、先生……っとマスター・クマゴンは“唯一生存が明らかな魔法使い”って言いましたよね。ってことはまだほかに魔法使いはいるんですよね? だったらその人たちが何とかしてくれるでしょう?」

 マスター・クマゴンは首を振った。

「あんた以外には、あんたたちより先にもう一組の使者として、剣士様と村を出た魔法使いしかもう生き残ってないの」
「どういうことですか?」
「蔑まれる職業だから、もともと魔法使いは少ないの。それなのに、これまで使者として送られた魔法使いは謀反の濡れ衣を着せられて処刑されたり、請願書を運ぶ途中で盗賊や山賊、魔物に襲われて死んだりしたのよ」

 もう一人の魔法使いさん、どうか生きていて!

 私が両手をギュッと握りしめたとき、小屋のドアが叩かれた。

「マスター! マスターはいるか!? 使いコウモリが来た!」
「何ですって」

 マスター・クマゴンが椅子からさっと立ち上がった。
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