魔恋奇譚～憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

　チチチ、ピピピ……と歌うような声がする。

　これって小鳥の鳴き声……？

　私は目を開けて起き上がった。電車が駅に到着して私は目が覚めた……つもりだったのに、やっぱりそこは質素な屋根裏部屋だった。

「まだ私、目を覚まさないんだ……」

　まさかゲームをクリアしないと現実世界に戻れないとか……。それとも、そもそも高校生だった私の方が幻で、今の私の方が現実だったりして……。

　考えているとなんだか混乱してきて、考えるのをやめた。ベッドから出て階段を下りると、暖炉の前にマスター・クマゴンがいた。昨日と同じ、白い麻のローブ姿だが、腰紐の色が赤から緑に変わっている。彼（彼女？）なりのおしゃれなのかもしれない。

「おはよう。疲れは取れた？」

　マスター・クマゴンに訊かれたけれど、正直言うと、藁のベッドの寝心地はいいとは言えなかった。とはいえ、泊めてもらっているのに正直に答えすぎるのはよくないだろう。

「おはようございます。ええ、まあ眠れました」

　曖昧に濁しておいた。