世界で1番愛する君へ~君に届けるラブソング~
たどり着いた場所は金閣寺
金閣寺を前にしても全く感心を持たない様子のカナウ君
その背中をただ見つめる私
班行動なのにカナウ君は1人でいる
自分で自ら離れているように見える
そんなに皆と行動することに拒むのか……
寂しくないのかな?
話しかけても大丈夫かな?
頭の中でグルグルと回った疑問
結果
私はやっぱりカナウ君に小走りで駆け寄り話しかける
「カナウ君!
一緒に写真撮らない?」
「……」
唐突な大胆な質問をしたつもり
驚く顔も見てみたい
そんな興味を抱いてしまったから
でもカナウ君は驚くどころか無視
なんとなく予想は出来ていたけれどそんな君でも好きだから
それはそれで少しドキドキ
それに撮りたい一番の理由はカナウ君との思い出を1つでもいいから残したくて
この先、行く高校が一緒かも分からないし
高校が別になってカナウ君のことを忘れてしまう日がいつか来てしまうだろう
それでも、中学生だった時代にすごく好きな子がいたな、って大人になっても覚えていたいから
好きがばれたっていい
大好きな君を忘れたくない欲張りな私
好きに気づいて欲しいくらいだよ
だから、ね?
「カナウ君!
お願い!」
「やだ」
低く囁く君
私を置いて違う場所に行こうとする
それでも私は逃さないよ?
ガシッとカナウ君の腕を掴み自分のもとへ引き寄せる
油断していたのかカナウ君は案外簡単に私に引き寄せられた
そのとき見せた驚いた顔
意味が分からないと言いたげの顔にクラクラする
初めて見た君のこんな表情にまた好きが溢れて
かわいいなぁ
なんて…
さらに、ちょっと皆から注目を集めたぐらいで焦って少し赤くなる君が愛しい
私だって恥ずかしくない訳じゃないけど
正直自分のしてることの恥ずかしさが全部君の表情に引き込まれて消えていく
「ちょっと…何する…」
私を遠退けようと私の肩を押す
でも、そんな片手の力ではカナウ君の腕にしがみついてる私はびくともしないよ
にひひ、と笑って見せるとカナウ君の呆れたようなため息と表情が返ってくる
「いいじゃん、いいじゃん!」
「俺はいやだ」
のんきな明るい私の声が君の冷めきった台詞で呑み込まれる
回りのクラスメイトからのざわめきがいっそうに大きくなっていくように感じる
チラチラと私達を見ては茶化すクラスの男子共
頑張れ、と言わんばかりに拳を作る友達
他に来ている観光客の皆様の目にも私達がうつっているだろう
その状況に心が折れたのかカナウ君はため息をついてから「1枚なら」と囁くのだった
その言葉に私はパァ、と表情を綻ばせる
そして大声で友達を呼ぶ
カナウ君が逃げてしまわないようにしっかり腕は掴んだまま
強引でごめんね
困らせてごめんね
でもね、大好きだからつい欲張りになっちゃう
わがままになっちゃう
だから、ありがとうねカナウ君…
「ルナ、カメラこれでいい?」
駆けつけてくれたアヤメ
カナウ君のどこがいいの?、なんて毎日のように聞いてくるけれどこういうときはちゃんと協力してくれる優しさがある
頼りになるお姉さんキャラだ
「うん!
ありがとう、アヤメ」
「いえいえ
ほら、もっとくっついて!」
アヤメはカメラを構えて私達を促す
でも、くっつくって…
そりゃくっつきたくない訳じゃないんだけど…
カナウ君の顔を伺う
パチッと目があう
ちょっと困ったような、どうすんだよ、と目で私に訴えてくる
うん…うん、そうだよね
これ以上カナウ君の嫌がることをしたらダメ
大丈夫、分かってるよ
君に迷惑をかけるのもほどほどにしないとだよね
回りの目も気になり出してきたし
今は…この君の左腕だけで我慢してあげる
「いいよ、アヤメ!」
「お、おう
よし、じゃ、1足す1はー?」
「にー!」
もちろん声を出したのは私だけだけど
とにかくこれでカナウ君とのツーショットゲットだよ!
カナウ君にお礼を伝えようとカナウ君の方に顔を向ける
カナウ君は私と目を合わせようとしないけれど私が左腕を離していないのでまだ側にいてくれている
とにかくお礼を、と思って言葉を口に出したがアヤメに遮られることになった
「カナウ君!
ありが…」
「あー!!
ちょっと!重留!」
アヤメのいきなりの大声にビクッと肩を震わせた私
カナウ君は無表情で左腕に少し力をかけたように感じた
「アヤメ、どうしたの?」
「ちょっと、ルナ!
これ!」
そう言いながらアヤメはカメラの画面を私につきつける
一体どうしたのか
私はカメラの画面を見てため息ををついた
「カナウ君…素直に写ってくれるとは思ってなかったけど…」
カメラの画面に写っていたのはカメラの方向を向いているのは私だけカナウ君は目線をはずし横顔しか写ってない
「ちょっと重留!」
「1枚は1枚だから…
手、離してくれる?」
「取り直しよ!取り直し!」
「やだ」
「これは1枚には入らないから!」
「入る」
わー、カナウ君がたくさん話してる
と関心してしまったことは置いといて
アヤメはカナウ君を責め立てる
今度はアヤメに皆の注目が集まる
強気なアヤメはなんとか私にちゃんとしたツーショットを撮らせようと必死だ
アヤメ……
ごめん、アヤメありがとう
でもね、これ以上はカナウ君もさすがにお願い聞いてくれないだろうし
それに私は…
カナウ君達から目を離して再びカメラの画面を見つめる
確かに楽しそうに笑っているのは私だけだけどこれはこれできっといい記念になる
だって初めてのツーショットなのに消したらもったいない
取り直しなんてしたらもったいない
これでも充分嬉しいんだよ
「いいよ、アヤメ
これで充分!
カナウ君もありがとうね」
「別に」
私なら絶対に粘り続けると思っていたのだろうかカナウ君は1度私を見てからまた目をそらして言葉を投げ捨てるように言った
アヤメはブーブーとまだ文句があるようだが「ルナが言うならまぁいいや」と言って微笑んだ
「じゃ、早く手、離してくれる?
いい加減、回りからの目が痛いんだけど」
冷たく言い放ったカナウ君に私は今の状況を思い出した
さっき離してと言われたのにまだ、カナウ君の腕にしがみついていた
「う、うわぁぁ
ごめん!カナウ君!」
私はバッ、と手を離しカナウ君にわざとじゃないよ、と付け加えた
カナウ君は、そこは全く気にしていないような様子でさっさとどこかに歩いていってしまった
カナウ君って以外とベタベタされるのは嫌いじゃないのかな?
それとも私だからいいとか?……そんなわけないか
でも、たまには妄想ぐらい許してね
やっぱり、カナウ君には心を開いてほしいし、私のこと好きになってもらいたい
だから私、卒業までに絶対に君の心を動かしてみせる
晴れた空にギラギラと輝く太陽は私と君を照らす
まるでスポットライトのよう
いつかこの写真みたいに……今度は君も微笑んで私と一緒に写真を撮ろう、隣にいるのがあたりまえ、って思われるように私は君を恋に落とすために努力するから
…好き…
今はその言葉を太陽に掲げておきます
春の暖かい風に吹かれ太陽に手をかざしながらまだまだこれからだと軽く微笑んだ