世界で1番愛する君へ~君に届けるラブソング~
「ルナー?」
少し遠くから聞こえる私を呼ぶ声
カナウは振り返った
でも、私はその声が誰のものかすぐに分かった
「お母さんだ!」
そう声をあげながら私はすくっと立ち上がった
そしてカナウの手を握りお母さんの声がした方へ向かって声を張りあげた
「おかーさーん!!」
その声で私の居場所に気づいたであろうお母さんはすぐに公園に来てくれた
息を切らし、とても疲れている様子
どうやら急にいなくなった私のことをずっと探していてくれたらしい
心配かけちゃった…よね?
少し何か言ってから公園に来ればよかったのかな
でも、言ったら察しちゃうでしょ
お母さんに気を使って一人になりたかったってこと
お母さんが泣くのを耐えるところももう見たくないんだよ
「ルナ!
ダメでしょ?
1人で何処かに行っちゃ、お母さん心配したんだからね?」
うぅ…
やっぱり怒られた
でも、いつもより言葉にとげがないように感じる
きっとお母さんも私の気持ちを察してくれたのだろう
お母さんだって、涙を流すのなら一人の方がいいんでしょ?
心配かけたくなくて
だから、私の前では少ししか泣かなかった
強がって、泣くのを堪えてるお母さんを見るのがすごくつらかった
でも、私ちゃんと分かってるからね
昨日、お父さんが死んでしまった夜
1人になったとき私よりも泣いていたもの
今だってそうだったんじゃないの?
ほら、目が真っ赤だよ?
「ルナまでいなくなったらお母さん…もう………」
お母さんは涙を一粒こぼし俯く
強がっていたお母さんのちょっとした弱音を聞いた
ごめんね、お母さん
私勘違いしてたよ
お母さんは強がっていた
だから、私の前では泣かないんだとそう思っていた
でも違ったんだね
お父さんがいなくなってしまったからこそ私がお母さんの側にいてお母さんを支えてお母さんを笑顔にしてあげなきゃいけないんだよね
お父さんみたいに大きく構えていられないだろうけどそれでも私がお母さんを笑顔にしてみせる
「お母さん…
私ね、お父さんがいなくなってすごく寂しいよ
でも、お母さんは私以上に寂しいんでしょ?
だからね、もうそんな思いさせないよ、私がずっと一緒にいるからね
カナウと……一緒に…」
そういって私はお母さんの正面になるようにカナウの手をひいた
カナウは最初は戸惑っていたけどお母さんと目があってから優しく微笑んだ
「ちゃんといる…です……」
カナウはそう言ってから私の後ろに隠れてお母さんの様子を伺う
細い声でぼそっとささやいたカナウ
それでもちゃんとお母さんには届くはずだから
お母さんは俯いていた顔をあげて涙を拭ってからカナウと私の頭を撫でた
何も声に出していなかったけど嬉しそうに微笑みながら
優しく
お父さんがいなくなってから悲しそうな顔しかしていなかったのに強がった表情だけだったのに
笑顔になったお母さんを見て純粋に嬉しかった