世界で1番愛する君へ~君に届けるラブソング~



「ルナー!

 持ってきたよ」


5分もたたないうちにお母さんは来た

どうやら小走りで行ってきてくれたらしい

右手にはデジタルカメラを持っている


「来たよ!

 カナウ、こっち」


私はカナウの手をひいてお母さんのもとに向かう

お母さんはニコッと微笑んで少し屈んでカメラを構えた


「そこに並んでね」

「うん!

 ほらカナウ、ピース!」

「うん!」


柔らかくて温かいカナウの笑顔がが返ってくる

寒さなんて吹っ飛んでしまうような

そんな笑顔が大好きで私も笑顔になる


「はい、チーズ」


カシャッ、とカメラから音が鳴った

私はピースを作っていた手を下ろしカナウと目を合わせて微笑み合う

お母さんはカメラの写真を確認してからカナウに笑顔を向けた


「カナウ君も写真いる?」


うんうん!

カナウにも持っていて欲しいな

それにお家の場所も聞きたいし

届けに行くよ、君の家まで

でも、カナウが返したのは全く逆の答え


「いや、僕はいいや」


え、どうしてよカナウ

お母さんの質問に悩むことなく返したカナウに少しビックリした

カナウ…にはこの出会いを大事に持っていて欲しかったのに


「だって、コレカラだってたくさん撮れるからね!」

「カナウ…」


1番最初の思い出は大事だけどこれからも大事…だから…うん、次撮ろうね

大好き…だから

寂しかった心を一瞬で温かくしてくれた

そんな君とこれからもずっと一緒にいられるんだよね?

嘘だったら許さないよ?


私はこの時…

気づいていたけど…カナウのぎこちない笑顔に私は無視をした

だって悪い予感しかしなかったから

でも、その予感の意味が私にはまだ分かっていなくて逃げた


「ルナ、そろそろ帰るわよ?」


お母さんは私の手を握った

でも、まだカナウのこと全然知らないし

また、明日会う約束も…


「えー、もうちょっと!」

「だーめ!

 今、家に帰ってみたら姉さん来てたから、帰るよ」


しょうがない…だよね

大丈夫、明日また、この場所で会おうね


「はーい」


私は緩く声を出した

お父さんが死んじゃったからいろんな親戚の人が挨拶に来る

それで私も挨拶しないといけないんだよね

だから今日はここでお別れだけど


「カナウ!

 また明日ね!」


そう言ってカナウに手を振ってからお母さんに手をとられカナウの横を通りすぎる

明日はもっと早く来よう

少しでもカナウといたいもん



「ルナ…ごめんね……」


ボソッとカナウはすれ違いざまにそう言ってカナウは逆方向に帰っていった


「え?

 カ…ナウ?」

私は振り返ったがカナウがこっちを振り向くことはなかった

どういう意味?

嫌な考えが一瞬頭を過ったけれどきっと気のせいだよね


ねぇ、カナウはずっと一緒だよね?


約束したもんね?


また明日になれば……


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