世界で1番愛する君へ~君に届けるラブソング~
アンケートの回収まで終わり私はとりあえずお礼が言いたくて後ろを振り向いた
そこにはペンケースにシャープペンシルをしまっている君があった
なんだ、シャーペンあるんじゃない
じゃあ、なんで鉛筆なんて……
「ねぇ」
私の声を聞いて顔をあげた
よく見ると、結構格好いい方かな?
白い肌、それも白すぎない綺麗と呼べる程度の
天然がかかっているのかフワフワした髪の毛
整った顔立ち
典型的なイケメンに近いかな?
とっさにそう思ったが顔に出さないように努力した
「これ、ありがとうね
助かった」
私は鉛筆を差し出しながらとりあえず笑顔を浮かべた
しかし、受け取ってくれなかった
なぜだ?
「それ、俺のじゃないけど」
そして、声が聞こえた
私の差し出した手を押し返す
なに?
そんなことはないはず
だって私、さっきちゃんと全部見てたんだからね
これはあんたが私に貸してくれたもので借りた私は律儀に返そうとしてるのだからちゃんと受け取ってくれないと私の良心が傷つくではないか
「え、でも……」
「違う」
そこまでむきになって否定する意味はあるのだろうか?
私はムッとするがまだ男の子は言い張るようだ
「それは、あんたのでしょ」
「んな、わけ……」
私は鉛筆を見て言い返そうとしていた言葉に詰まった
なんで……?
鉛筆には【桜井ルナ】私の名前が書かれていた
「嘘、どうして?」
こんな鉛筆…私持ってない
それどころか鉛筆を学校に持ってきていないもの
私は鉛筆を凝視するがどう考えたって君の…でしょ?
君を見るともう興味がないような顔をしてペンケースに消しゴムをしまった
その手を辿って私はペンケースの中をばれないように盗み見る
そして私は見つける
あ……
同じ柄の鉛筆がペンケースのなかに入っていた
そこまでして嘘をつく意味
なんだよ、もう
やっぱりあんたのなんじゃない
それでも私に鉛筆に名前を書いてまで嘘をつく理由は?
ただの照れ隠し……
素直に褒められようっていう選択肢はなかったの?
これ以上言っても無駄かな?
誤魔化し続けるだけ……
あんたの優しさは私だけが知っておくよ
じゃあ、遠慮なく貰っとくよ
ありがとう
私はすべてを察して思わず笑顔になった
やっぱり優しい……不器用すぎる、正直に言えないのか?
でも、そういうのすごくいいと思うよ
「不器用な優しさをどうもありがとう……」
私は呆れたように笑ったまま名札を見た
【重留カナウ】
「カナウ…君…」
カナウ君はピクッと体を動かしたが顔は下を向いていてどんな表情をしているのか分からない
でも、何も言ってこないならずっとそう呼び続けるよ?
ねぇ、カナウ君……?