in theクローゼット
『わたしが男の子だったら、ぜったい愛ちゃんに惚れちゃってたな』
ベッドに寝かされながら思ったことをそのまま口にすると、愛ちゃんは困ったように笑う。
わたしは、愛ちゃんが本当に好きだった。
大好きだった。
わたしが男の子だったら、愛ちゃんが男の子だったら、きっと両想いになれてたはずなのに。
でも、わたしも愛ちゃんも女の子だった。
それでも、恋をしようと思えばいくらでも出来たはずなんだ。
だって、愛ちゃんはわたしを好きになってくれた。
でも、わたしは愛ちゃんに惚れたりしなかった。
囚われてしまっていたから。
男の子とか女の子とかそういうことにこだわって、常識に縛られて、結局わたしは大切な人を失った。
考えなしのわたしは、愛ちゃんをいっぱい傷つけただろう。
だって、どうして考えられる?
同性だよ?
最初っから、対象外だよ。
同性じゃなかったら、愛ちゃんのことをこんなに大好きにならなかった。
親友だなんて、きっと思えなかった。
でも、同性だからわたしは愛ちゃんのことを好きになれない。
私と愛ちゃんは、両思いだったのに。
愛ちゃんは、わたしの唯一の親友だった。
だから、恋人にはなれない。
親友としての愛ちゃんが好き。
わたしには愛ちゃんを傷つけることしかできない。
だから、終わりにしよう。
さよならにしよう。
まだまだ未熟で幼いわたしたちには、それが最良の方法なの?
わたしは引っ越して、新しい土地での生活をスタートさせる。
そこではきっと、新しい友だちが待っている。
親友と呼び合えるような人と出会えるかもしれない。
愛ちゃんもまた、恋をするのかな?
また、女の子に恋をするのかな?
嫉妬する資格なんてわたしにはないのに、少しだけ寂しい。