in theクローゼット
「そのまま家来る? いったん荷物置いてくる?」
「面倒くせぇし、篠塚がいいならこのまま行く。親には、ダチん家行くってメールしときゃ平気だろ」
校門を抜けて、二人仲良く並び私の通学路を逆走する。
「じゃあ、途中でコンビニ寄ってこう。道具はあるんだけど、肝心要のチョコレートをまだ買ってないんだよねぇ」
制服姿の男女である、私と稲葉。
きっと傍目にはかわいらしい中学生カップルに見えるんだろう。
「ねえ、稲葉。手ぇつながない?」
夕日に照らされる二つの影に、舞と一緒に帰っていた日々を思い出す。
稲葉の影は、舞よりも長い。
「何だよそれ。迷子防止?」
稲葉は可笑しそうに笑って、私の手を掴んだ。
「うん……そうかな」
私は稲葉の手を握り返して、少し俯き奥歯を噛みしめる。
少し、泣きそうな気分だった。
本当に迷子になってしまいそう。
稲葉が私の手を引いて歩く。