in theクローゼット
「これね」
稲葉からラッピングセットを受け取ると、パッケージに書かれた完成予想図を確認する。
ホワイトペーパーで箱を包んで、ピンクのくしゅっとした不織紙とリボンで飾る、ちょっぴりゴージャスで可愛いラッピングだ。
「結構、いいセンスしてんのね」
私は稲葉の選んだラッピングセットと、香坂さんたちにあげる友チョコ用のレース模様の小さな袋を買いにレジに向かう。
「篠塚、チョコは?」
「いけない!」
肝心のチョコレートを忘れるところだった。
板チョコをごっそりといただく。
「どんなチョコつくるんだ? トリュフとか?」
「ううん。溶かして型に入れるだけの簡単なの。稲葉、あんまり手先が器用じゃなさそうだからね」
「は?」
不思議そうに首を傾げる稲葉は、まだ私の策略に気が付いていない。
「ふふふっ」
家に連れ込んでしまえば、後はこっちのものだ。
決して、逃がしはしないよ。
「お願いしまーす」
私は上機嫌で、レジに向かった。