in theクローゼット
「青山って、いい奴だよなぁ」
「な、なんだよ、圭一! 照れるだろ」
思わず口をついて出た言葉に、青山が顔を真っ赤にする。
「あははっ、照れてる照れてる〜」
水無瀬の笑い声を聞きながら、俺は考えていた。
こっそり、このチョコレートの山の中に俺の作ったチョコレートを紛れ込ませることは出来るだろうか。
もしそれが出来たなら、青山は俺の気持ちも食べてくれるのだろうか。
青山に俺の気持ちごとチョコレートを食べてもらって、この気持ちが消化されてどこかへ消えてしまえばいいのに。
「青山、これ使えよ。カバンに入りきらないだろ?」
「おお、ありがとう」
技術の道具を持ってきた紙袋を青山に差し出す。
「なんでオマエ、紙袋なんか持ってんだよ。さては、自分もたくさんチョコもらえると思って準備してきたな!」
「なにバカ言ってんだよ」
俺は笑いながら、篠塚からチョコレートを受け取らなかったことを後悔していた。