in theクローゼット
side-稲葉圭一
* * *
頬を染めて恥ずかしそうに俯きながらも、嬉しそうに好きな人のことを話す篠塚。
俺はそんな彼女を素直に可愛いなと思えた。
女の子を見て、普通に可愛いなとかそういうことを思える。
なのにどうして、俺は青山を好きになってしまったんだろう。
「稲葉は? 稲葉は青山のどこが好きなの?」
ずっと俯いて床に向かって喋っていた篠塚が、俺の方を見上げてきた。
「単純だよ。格好いいトコロ」
自分で言いながら、そのあまりの単純さに肩を竦めてしまう。
中学に入って最初の剣道部の試合。
クラスのみんなが応援しに行くって言うから、俺も付き合いで行ってみただけの試合だった。
格闘技場の中に響く、耳に痛い大声援。その中で向き合う二人。
試合開始と同時に踏み込まれた足に、相手は動く間もなく面と叫んだ声があの声。
声援の中でも凛と高く響いた。
一本を取り、試合はあっという間に終わってしまった。
勝ったにも関わらず喜ぶ様子もなく冷静な様子で、無言で面を脱いだ。
面の下から現れた引き締まった顔。
紅潮した頬。
その美しい出で立ちに、引き込まれる。
それが青山で、一目惚れだった。
「顔が赤いよ、稲葉」
下からニヤニヤと覗き込んでくる篠塚に、思わず顔を腕で隠してしまう。
「見てんじゃねぇよ!」
「やっぱり稲葉も好きなんだねぇ」
からかうように言われ、思わず意地の悪い言葉が口をついた。
「いくら好きでも、意味ないよ。好きになってもらえる可能性なんてないんだから」
自分の痛いところは篠塚も痛い所だ。
そこをついたのに、篠塚の笑顔は崩れなかった。
頬を染めて恥ずかしそうに俯きながらも、嬉しそうに好きな人のことを話す篠塚。
俺はそんな彼女を素直に可愛いなと思えた。
女の子を見て、普通に可愛いなとかそういうことを思える。
なのにどうして、俺は青山を好きになってしまったんだろう。
「稲葉は? 稲葉は青山のどこが好きなの?」
ずっと俯いて床に向かって喋っていた篠塚が、俺の方を見上げてきた。
「単純だよ。格好いいトコロ」
自分で言いながら、そのあまりの単純さに肩を竦めてしまう。
中学に入って最初の剣道部の試合。
クラスのみんなが応援しに行くって言うから、俺も付き合いで行ってみただけの試合だった。
格闘技場の中に響く、耳に痛い大声援。その中で向き合う二人。
試合開始と同時に踏み込まれた足に、相手は動く間もなく面と叫んだ声があの声。
声援の中でも凛と高く響いた。
一本を取り、試合はあっという間に終わってしまった。
勝ったにも関わらず喜ぶ様子もなく冷静な様子で、無言で面を脱いだ。
面の下から現れた引き締まった顔。
紅潮した頬。
その美しい出で立ちに、引き込まれる。
それが青山で、一目惚れだった。
「顔が赤いよ、稲葉」
下からニヤニヤと覗き込んでくる篠塚に、思わず顔を腕で隠してしまう。
「見てんじゃねぇよ!」
「やっぱり稲葉も好きなんだねぇ」
からかうように言われ、思わず意地の悪い言葉が口をついた。
「いくら好きでも、意味ないよ。好きになってもらえる可能性なんてないんだから」
自分の痛いところは篠塚も痛い所だ。
そこをついたのに、篠塚の笑顔は崩れなかった。