in theクローゼット


「誰がこんなことしたんだ!」


 侮蔑に覆われた机に両手を叩きつけると、小気味よい音と共に手のひらが痺れた。

 教室は静まり返り、誰しもが俺を見ていた。


「誰がやったんだ!」


 持てる限りの力で叫ぶ。

 信じられない。

 信じたくなかった。

 なんで、篠塚がこんなことをされなきゃいけないんだ。

 どうして、同性愛者であることをこんな風に殴り書かれなきゃいけないんだ。

 なんの権利があって、こんな風に他人に気持ちを穢されなきゃいけないんだ。


「誰、が……!」


 頭に血が上って、くらくらした。

 篠塚は、俺だ。


「あの、稲葉くん……」


 血液に押し出されて、涙まででそうになっていた俺に声をかけたのは、香坂だった。

 三笠の次に篠塚と仲がいいイメージのクラスメイトだ。


「たぶん、青山くんのファンがやったんだと思う」


 おそるおそるといったように香坂が口を開くと、他のクラスメイトたちも次々に口を開いた。
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