in theクローゼット

「…………」


 怒った顔の稲葉は無言で私たちに近寄ると、三人をそれぞれ乱暴に引き離していく。


「稲葉っ……!」

「大丈夫か?」


 稲葉に腕を引っ張られて立ち上がると、稲葉は私の髪や制服の汚れを払ってくれた。

 そして私を背中に庇うように振り替えると、隅で縮こまっている先輩たちを睨みつけた。


「ちょ、ちょっと、なに考えてんのよ!」

「ここ女子トイレよ!」

「信じらんない!!」


 三人は口々に稲葉に文句を垂れるが、稲葉は意に介さない。

 私に浴びせるために水を溜めたバケツをつかむと、無言で三人に浴びせかけた。


「冷った」

「最低ー」

「なにすんのよ!」


 ずぶ濡れになった先輩たちの前を、稲葉に腕を引かれて通り過ぎる。

 泣きそうな声で抗議しているが、アレを私にしようとしていたんだから同情は出来ない。
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