in theクローゼット
「あ、大丈夫か?」
篠塚がフェンスから降りようとするのに気づき、腰に手を添える。
「あ、もしかして……香坂さんの付き合ってる人って」
トン、と爪先が床に着いたと同時に声を上げた。
「いやいやまさか」
篠塚の発言を全力で首を振って否定する。
香坂と水無瀬のカップルなんて、不釣り合いにも程があるだろ。
「まぁ、香坂さんは授業サボってデートするようなタイプじゃないしね」
「俺と篠塚と違って?」
「あはははは」
そう言って笑うが、そもそもあれはデートなんかじゃないだろう。
ただ単に、水無瀬と香坂が授業をサボってる俺たちを探して見つけて注意してとか、そんな感じだと思う。
篠塚の机に落書きがされて、俺は青山にキスして逃げて、きっと教室は大騒ぎになっている。
水谷先生が頭を抱える姿が目に浮かぶようだった。