in theクローゼット
「ありがとう、篠塚さん……もうこんなこと言う資格ないかもしれないけど、やっぱり俺は篠塚さんが好きだ」
俺の目の前で、青山が篠塚を真っ直ぐに見つめて告げる。
「例え篠塚さんが誰を好きでも、俺は篠塚さんが好きなんだ」
バレンタインに察した言葉が、目の前で告げられる。
ふわりと、体が浮かぶような眩暈を感じた。
「ありがとう……」
篠塚が深く俯き、消え入りそうな声でつぶやく。
俺が欲しくてたまらない青山の気持ち。
それに応えられない篠塚は、ただ感謝の言葉を口にする。
同性愛者である篠塚に青山は恋をした。
どうしようもない恋をした。
青山も、俺たちと同じなんだ……
「だから、圭一。おまえの気持ちには応えられない」
篠塚の答えに満足そうに微笑んだ青山が、くるりと向きを変えて俺を見る。
真剣な眼差しと目が合って、青山の唇の感触が瞬時によみがえった。
耳が熱くなる。
直視出来なくて、思わず目を逸らしてしまっていた。
「最初から知ってっし」
両思いになれるかもなんて、そんな幻想は夢のなかでも見れなかった。