in theクローゼット
 置いて逃げた俺のことを、篠塚はどう思っただろうか。

 いろんなことを話して相談して秘密を共有できる大切な友達だった。

 さっきも、俺の話を親身に聞いて、励ましてくれていた。

 なのに、俺は恩を仇で返してしまった。

 一生ものの、友達だったろうに。

 篠塚はあんなにいい奴で、俺はこんな奴だ。

 必死で足を動かして、住宅地の景色を後ろに流していく。

 浮かれた電飾の家々が眩しかった。

 青山も、きっと俺を軽蔑してる。

 校則違反の男女交際ならまだしも、クラスメイトにからかわれてその彼女を守るどころか一人で逃げ出してしまったんだから。

 最悪な男だよ、俺は。

 青山も、きっと俺が篠塚と付き合っていると思ったんだろう。

 だからあんなに俺のことを睨んでいたんだ。

 青山は真面目な奴で、校則も隅から隅まできっちり守っているような性格なんだから。


 俺は、そういうところも好きだったんだけど……


 絶望的だ。


 篠塚にも青山にも嫌われてしまったと、自転車のスピードは気持とともに落ちていった。

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