in theクローゼット
「ありえねぇ〜!」
「なんでだよ」
「だって、俺たち中学生だぜ! 思春期だぜ! 頭ん中エロいことばっかだろ!」
「おまえと一緒にすんなよ……」
ちょっと、水無瀬の彼女とやらに同情したくなった。
「でもよ、篠塚ってフツーに美人だし、結構狙ってるやつ多いんだぜ」
「……マジで?」
フツーに美人って、誉めてるのかそうでもないのかわからない単語だが、目からウロコの新事実だった。
「マジでマジで。オレはもっとかわいい系の方が好みなんだけどよ、カッコイイ女子が好きなやつは好きらしいぜ〜」
割と整った顔立ちだとは思っていたが、美人だとかそういう基準で考えたことはなかった。
確かにカッコイイ性格しているし、モテると言われれば、モテても不思議はない……かもしれない。
青山は、どう考えてもカッコイイ系だよな。
水無瀬はアホだし、かわいい系か?
俺は、どうなんだろう。
青山は、どういうタイプが好きなんだろう。
青山も篠塚もカッコイイ系。
もしこれで篠塚の方を好きになれたら、こんなに悩まなくてもよかったんだろう。
けれど、それでも篠塚に抱くのは友愛の情だけだった。
でもま、恋愛感情より友情の方が末永くお付き合い出来る。
そう思えば、俺が篠塚を好きにならないのは当然なのかもしれない。
男が好きなのか、男も女も好きになれるのか、俺の性的指向はまだまだファジーだ。