in theクローゼット
「篠塚。俺、入り口で待ってるから」
俺がすべきことは全部した。
あとは篠塚と三笠の問題だ。
邪魔者は退散するとしよう。
「うん、わかった。ありがとう……稲葉」
入り口を指差す俺に、篠塚が微笑む。
少しでも力になれたのなら、嬉しかった。
余計なお世話にならないことを、これから祈ろう。
告白の返事は覆らないにしても、篠塚が納得いく結末になればいい。
黙ったまま俯いている三笠に一瞥をくれると、自転車を押して二人に背を向ける。
公園の名前が記された低い石垣の前に自転車を止めると、コートのポケットを探ってイヤフォンを取り出す。
それを携帯電話に接続して耳に掛け、ミュージックプレイヤーを起動させる。
近頃ひいきにしているインディーズバンドのミニアルバムが流れ出した。
ドラムのリズムがやけに耳に残る。
長い話になるだろう。
見上げた空に雨の予感がした。