in theクローゼット
side-篠塚愛子
* * *
「舞は……私のこと、嫌い?」
稲葉が立ち去り、私は公園で舞と二人っきりになる。
震える声の問いかけに、舞はあっさりと答えた。
その返答に、胸が締め付けられる。
「うん、嫌いだよ」
風が冷たくて、指先が凍えるようなのに、なぜか手は汗をかいていた。
「でも、私は舞が好きだよ」
「だから私は嫌いなのよ」
冷たく突き放される。
覚悟をして、ここまで来たはずだった。
あの日の言葉が全て嘘だったと、知る覚悟をしてきた。
でも、その覚悟を突き抜け、涙が滲んだ。
私は舞が好き。
同性でも舞が好き。
だから、舞は私が嫌い。
同性の舞が好きな私を、舞は嫌い。
もしも、私が舞を嫌いだったら、舞は私を好きになってくれた?
そんなこと、あるはずないのに……
私はどうしたらいいんだろう。
舞は私が嫌いで、私も舞が嫌い。
そうなれたら、きっと楽だった。
でも、嫌いだって言われたからって、舞を嫌いになることも出来なかった。
舞は私が嫌い。
それでも、私は舞が好きだよ。