Love Birthday‥
「愛実ちゃん、私は理学療法士じゃなくて作業療法士よ」
山本さんの言葉で頭の中が固まった。
作業療法士……?
また私の知らない言葉だった。
固まったままの私に山本さんが教えてくれた。
「理学療法士は最近有名になってきてるけど、作業療法士はまだまだ知ってる人が少ない職業なのよね。
一言で言うと、日常の動作の基礎の練習が理学療法で、
応用して使えるようにするのが作業療法」
なんとなくわかるような気がしたけど、私の頭からはまだ?が消えきらない。
そんな私を見て、山本さんが遠くにいる患者さんに目を向けた。
「あの患者さんは、どうして何度も車いすから椅子に移動してると思う?」
視線の先には、頑張って車いすから立ち上がろうとしている女の人がいた。
「あの人はね、病気で左半身が不自由になったの。
理学療法で立ち上がる動作までできるようになった。
だけど、あの患者さんの願いは一人でトイレに行くことなの。
だから、車いすから便座に移動できるように、今一生懸命練習してる。
これが作業療法。
翔太君や熊田さんも、ただ絵を描いたり折り紙をしていたわけじゃないのよ。
指先の巧緻性を伸ばしたり、箸を使えるようにするためだったり、
それぞれに意味があってやっているの」