Love Birthday‥
去年の暮に就職活動で地元に戻ったとき、
懐かしい校舎に足を踏み入れた。
その時の私は、学生から社会人になるというプレッシャーに襲われていた。
先生や家族に見守られながら夢を叶えようと毎日勉強した日々から、
自分の責任で一つひとつの物事を決めていかなくちゃいけない日常になる。
それがとても重たく、社会の扉を開くことが怖かった。
校舎に入ると、及川先生が笑顔で迎えてくれた。
その笑顔は昔と変わらず、眼尻のしわだけが増えていた。
先生がコーヒーを出してくれた時、なんだか少し照れくさくなった。
「市ノ瀬はこっちで就職するのか?」
「はい。できれば私がお世話になった病院に就職したいと思っています」
私が答えると、急に及川先生が笑いだした。
「はははっ」
「え? なんですか……?」
私、変なこと言ったかな??
「すまん、すまん。
市ノ瀬がそんな丁寧な言葉で話すもんだから……。
おまえも成長したんだな」
そういえば、高校生の頃はもっと雑な言葉で話してたかも……。
なんだか恥ずかしくなってコーヒーに口をつけた。