Love Birthday‥
「市ノ瀬って彼氏いたことある?」
「あるよ?
なんでそんなこと聞くの?」
「俺、市ノ瀬が男といる所見たことないから」
「吉田君はいつも女とばっかりいるもんね」
「そんなことねーよ!」
他愛のない会話が、なぜかとても心地よかった。
気づいたら時計はとっくに八時を回ってて、私達は暗い教室の中、月の光だけを頼りに話してたんだ。
ホント不思議。
電気をつけることも忘れてたんだから。
「そろそろ帰るか」
「そうだね」
私達が教室を出ようとした時、
カツカツカツ――
と廊下を歩く足音が聞こえてきた。
小さく照らす光が壁を自由に動き回っている。
私と志則は『やばっ!!』って顔を見合せて、ドアから離れた。
誰かが見廻りに来たんだ!!
こんな時間に電気もつけないで二人で残ってたなんて知れたら変に思われちゃう!
焦る私の手を志則が無言で引いた。
え!? なに??
志則がドア側の壁の中央に座り込み、私の体を抱き寄せる。
『ここなら見つかんない』
驚いて立ち上がろうとした私の耳元で、志則が囁いた。
確かにここなら見つからないかも。
たくさんの机と壁で、私達は囲いの中にいるようだった。
運良く見廻りの人はこの教室に入らないまま下の階に行った。