Love Birthday‥
杉田君が向かった場所は、初めてデートをした喫茶店だった。
コンクリートの階段を上り木のドアを開けると、懐かしい香りがした。
コーヒーと甘い蜂蜜のような香り。
テーブルには小さなコップにかわいいお花が飾ってあって、
私達はピンク色の花のある窓際の席に座った。
すぐに店員さんがメニューを持って来てくれたけど、私は緊張してまともにメニューを選ぶことなんて出来なかった。
だから、杉田君がココアを注文した時に、店員さんに「2つ」って追加して注文した。
店員さんがいなくなった後、長い沈黙になった。
あんなに何を話そうか考えたのに、何も頭に浮かんでこない。
杉田君の顔すらまともに見れないよ……。
「雪止まないね」
「そうだね」
窓の外に見える雪に視線を向け、勇気を振り絞って口を開いた。
なのに、杉田君の一言の返事で会話が終わってしまう。
あんなに会いたかった杉田君が目の前にいるのに、どうして上手く言葉が出てこないんだろう。
いっぱい言いたいことや聞きたいことがあったのに
全てがこの硬い空気に飲み込まれてしまっているように感じた。