Love Birthday‥



「どうして理学療法士になりたいの?」


私の質問に、志則の顔が真剣になった。


少しの間の後、志則が遠くを見つめて言った。



「俺、本当は医者になりたかったんだ。
俺の母さんの病気を治してやるって、小さい頃思ってた。
俺が小学校を卒業する前に死んじゃったけどね」



寂しい志則の横顔を見て、私は聞いてはいけないことを聞いてしまった気がした。


こんな悲しい顔の志則、見たことないよ……。




「ベッドに横になってばかりだと体力がなくなるから、母さんは毎日リハビリ頑張ってた。
俺は、そんな母さんを隣で見ていることしかできなかった。
その時に、理学療法士の人やいろんな患者さんと出会って、
リハビリを頑張ってる姿に胸が熱くなったんだ。
母さんも、他の患者さんも、理学療法士さんも、
みんな輝いて見えた。
病気が治っても、体が不自由だとその人の生き方が変わっちゃうだろ?
だから、少しでもその人がその人らしい生き方をするお手伝いをしたいって思ったんだ」




志則の思いに、胸が熱くなった。


私は志則のことを、何度最低だと思っただろう。


数えきれないくらい思った。


口にも出して言った。




志則は最低なんかじゃない。



こんなに夢とまっすぐ向き合えている人を、私は見たことがない。




私は志則の横顔を、真っ直ぐに見ることが出来なくなっていた。











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