Love Birthday‥



「誰かお捜しですか?」


白衣を着たポニーテールの女の人が声をかけてきた。



「いえ、ちがいます……」



慌ててその場から離れようとすると、鶴を折っていたおばあちゃんが口を開いた。



「山本先生、そのかわいい女の子はお友達?
私の若い頃にそっくりだわ」


「やだ熊田さん、熊田さんてこんなにかわいかったの?」


「そりゃ若い頃はかわいかったわよ。
男の人たちが私を取り合って大変だったのよ。ふふふ……」



熊田さんの笑顔が、なんだかとても優しく思えた。




「あの、私……」


「よかったら中に入ってみる?」



見学させてほしいと言おうとしたら、山本さんが声をかけてくれた。



「はい!」




なぜだかわからないけど、この扉の中に入ってみたかった。


志則の夢がどんなものなのか見てみたかったっていうのもあるけど、


それだけじゃない。



たぶん、さっきの渡辺さんの笑顔に背中を押されたような気がする。



扉の向こうに足を踏み入れながら、そう思った。











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