Love Birthday‥



扉の中に入ると、今まで見たことのない光景が広がっていた。




山本さんと同じ白衣を着た男の人の掛け声で、

倒れそうになりながら片足で立ち続ける中年の男性。



痛みで顔を歪めながらも、ゆっくり一歩ずつ歩く私と同じ年くらいの女の人。



怯えた表情で車いすから立ち上がろうとしている小さな男の子。





たくさんの人が、それぞれの目標に向かって一生懸命になっていた。



辛かったり、

痛かったり、

怖かったり、

怯えていたり、


扉の中には、いろんな表情があった。



その姿を見て、私は胸が苦しくなった。


不自由になった体を元に戻すために、必死になってリハビリをしている人たちから、私は目を逸らしそうになった。


けれど、目を逸らそうとした瞬間、男の子の顔が笑顔に変わった。



「やったー!! 僕、立てたよ!
先生、僕立つことができたよ!」



あんなに怯えた顔をしていた男の子の顔が、

キラキラ輝いて見えた。



「やったなー! 進君、頑張ったもんな!!」




進君という男の子と白衣の先生の声に、周りにいた人たちが顔を向けた。


進君の姿を見てみんなの顔が笑顔になる。



そして

『私も頑張ろう!』っていうふうに顔を引き締めて、

自分たちのリハビリを始めた。




私は、とても素敵な瞬間を目にしたのかもしれない。








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