意地悪な男と恋をはじめます。
これが彼女との最初の出逢いだったんだ。当時はまだ下の名前しか名乗ってくれなかった。だけど、毎回会うわけでもないから、どこかで俺は下の名前で呼ぶのに戸惑いを感じていた。

だからある時聞いたんだ。

「さくらちゃんのみょうじって?」

「わたしのみょうじ?」

「うん、だってぼくはなのったよ。」

「そういえばそうね。まみやよ。」

「あまみや?」

「ちがう。まみやよ。あはいらないわ。」

彼女はまみやさくらと言うんだ。そうだよ、今目の前にいる君が、あの時の子なんだ。君は覚えていないみたいだけど。
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