コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
黒くて長くて多い髪の毛。それはいつでも背中に垂れていて、長めの前髪で眉毛も見えず、話さないために性格も判らないクラスメイト。中くらいの身長、控えめな発言。何の委員会やクラブに入ってるかも知らない、そんな感じ。
その子と今日、俺―――――――――――ぶつかったよな、唇が。
ぶつかったのは二人の顔で――――――――・・・
ぶわっといきなり体が熱くなったのを感じた。うわ、と小さく呟いて片手で顔を覆う。
やめろやめろ、あれはキスなんかじゃない。違うんだぞ、俺~。
きっと赤くなっているだろう顔を隠すために顔にひっつけた手が離せない。別に誰かに見られているわけじゃないのに、俺は過剰に反応してしまっていた。
唇と、口の横きわきわが怪我をした。
多分、歯が当たったのだろうって思う。・・・佐伯さんの、歯が。
少しだけ低い背の彼女の、おでこが俺の鼻柱に当たり、夕日を避けるために顔を斜めにしていたのが災いして彼女の唇が俺の下唇に、それから歯も当たって切れた、そういうことなんだろう。
だらだらと冷や汗が出てくるのが判った。
・・・あの子は、大丈夫だったかな。判ってしまっただろうか、口がぶつかったの。あーうー、俺だけが気がついてるならいいんだけど。でないと・・・めちゃ恥かしい・・・。
まるでエンドレスリピートだ。今日は部活中でも彼女と衝突したシーンがぐるぐると頭の中を回っていたのだ。それは、拾ってしまった赤い小袋のせいだと思うけど。