コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
おまけ短編「夕日のバカ野郎」
本当に、いい天気だった。
しかも硬式であってもボールに影響が大きい風もそんなになく、寒すぎるということもない気温。今が2月の中旬ということを考えたなら、すこぶる幸運なスポーツ日和と言えるのだった。
「おい、航。今日はちゃんと来るんだろ?いい加減認めろよ」
顔中をニヤけさせながら、幸田がラケットを肩に担いでこちらへやってくる。
俺は帽子を目深に被りなおしながら、ぶすっと答えた。
「・・・一応、誘ったけど」
まだ、姿は見えないが。
今日はうちの高校のテニスコートで親善試合があるのだった。うちの学校の近所に新しく開校した、まっさらの私立高校の硬式テニス部と。
なんせそこはこの春に開校したばかりだから、1年生しかいない。男女共学で、噂によるとどこかの宗教法人が建てた学校らしかった。とにかく、そこの同じくまっさらなテニス部が、1年生しかいませんけれどもお手合わせ願えませんでしょうかー、と顧問の田崎先生に打診してきたらしい。
それで、試合の運びとなったのだ。試合といっても遊びのノリだって顧問は言っていたけれど、スポーツをやる人間たるものいついかなる時でも負けるのは悔しい。しかも相手は1年生ばかりの出来たてテニス部なのだ。負けるわけにはいかない。
というわけで、受験の終わった3年生の気晴らしと、もうあまり部活時間がなくなってくる2年生の楽しみと、1年生の体ほぐしとして、顧問はうちの学校へ招待を決めたらしかった。
簡単で手軽な親善試合として、土曜日の放課後に。だから勿論うちの学校の生徒は普通に観戦できるわけで、うちの部のエースである幸田がいやらしい顔をして俺に言っているのは、勿論お前の彼女は見に来るんだろ、ということだった。