コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
首まで真っ赤なんだろうか、もしかして・・・。
実は俺って照れ屋だったのかも、そう自分で発見した夜だった。
だって今までは部活部活で常に水の中にいて、水の中をいかに早く動くかどうかが大事だった俺には、すごく仲が良い女の子なんていなかったし、勿論女の子と付き合った経験もない。片思いをしたことはあるけれどそれもちょっとのことで、告白するとかされるとか、そんなことは皆無なのだ。
うわー、うわー、うわー!!
ヤバイ、頭を冷やさないと。
丁度乗り換えの駅について、俺はぱっと電車を走り降りる。ざあっと夜の風が吹いてきて、一瞬呼吸が楽になった。
暗い夜の中、乗り換え駅の為に大きな駅舎の中を色んな人が急ぎ足で歩いている。山の裾に広がる街の明りも近くなっていて、空には星のひとつも見えなかった。
学生の団体が笑いながら前を通り過ぎていく。俺もそれに混じって、電車の乗り換えへと向かった。
ガツッてぶつかった。あの子の、驚いて見開かれた瞳。
廊下の床に落ちた鼻血。それは夕日のせいで本当に真っ赤に見えた。
・・・痛かった。すごく、痛かった。
口の横に貼られたバンドエイドを人差し指で擦る。ジンジンとした痛み、だけど俺はその痛みのせいで、一人で懲りずに真っ赤になっていた。