コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
彼女には、一緒には帰れないとメールはしておいた。多分遅くなるからって。
もう部室には誰もおらず、俺のことを気遣う人間もいなかったから大いに悄然としていたのだ。
・・・彼女にいいところを見せたかった。その結果、結構な結末を迎えてしまったわけで。ハッピーエンドとは到底言えない、ブラックな結末を。
「俺・・・まじでもう嫌だ~・・・」
一人だけど、泣き言は小声で言う。
くそ、自分を殴りたい。だけど仕方がない。もう終わったことなのだ。俺は完全に舞い上がっていた。初めて出来た彼女にいいところをみせたくて、バカになっていたのだ。それを認めて、あとはもう泣き言を言うのはやめよう。
唇を一度強く噛んで、ふう、と力を抜く。
よし、と声に出してようやく腰を上げる。
時計はもう6時を過ぎていて、学校にも夜が訪れていた。
部室の鍵を職員室へと戻し、俺は人気のなくなった学校をあとにする。
何かに当たりたいような、そんな気力もないような、どうしていいやら判らない気持ちを抱えて駅までを歩いていく。
自分だけは相変わらず暗闇に包まれたままで、いつものように定期を取り出して改札を通り──────彼女を見つけた。
「あ」
ガランとした始発駅の構内に、声が響いたらしい。
ベンチに一人で座っていた彼女がパッと顔を上げて俺を見た。それから、にっこりと柔らかく微笑む。
俺はその顔を見て──────────一瞬で、目の前のモヤモヤが吹き飛んだ。