コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
俺が一人で部室にこもって悔しがっている間、彼女はそんなこと一つも気にせずに夕日にどっぷりと感動を貰ってたってことなのだった。
・・・・くそ、夕日のバカ野郎。
彼女に自分の情けないあの試合のことを考えられたら嫌なくせに、それが全然頭になかったのかと思うとそれはそれで何か悔しい。俺は本日の夕日にやきもちをやくバカバカしさに耐えていた。
ホームに騒がしい音を立てながら電車が入ってきた。風が巻き起こって2月の冷えた風を二人にふりかけて行く。
寒い寒いといいながら車内に飛び込んで、並んで座った。
彼女は楽しかったらしい。だけど、俺はまだ自己嫌悪に陥っていてちょっとばかり暗かった。だからボーっとしていたのだろう。佐伯が隣から顔を覗き込んできた。
「・・・航君、大丈夫?」
「え?あ・・・うん」
パッと笑顔を作ったけど、彼女はまだ心配そうな顔をしていた。言葉が止まってしまって静寂が訪れる。出発した電車が作る揺れの中で、俺は静かにゆっくりと息を吐いた。
それから、言った。
「今日の試合」
「え?・・・うん?」
「酷かったから。ガッカリさせたかなと思って・・・」
「ええと、私が?ガッカリ?」
「そう」
同じ車両には他に二人のサラリーマンがいただけだったけど、小声で言いながら俺は彼女の方を見た。やっぱり気になる。ちゃんとスッキリして帰りたかったのだ。