コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
彼女はしばらく考えるような顔をする。前髪がさらさらと揺れて、眉毛を隠してしまう。綺麗な肌。俺はついじっと考え込む彼女の横顔を見詰めてしまっていた。
「・・・そんなことない、かな」
「え?」
貰った言葉を聞き逃しそうになってしまった。俺は全意識を彼女に向ける。ちらっと俺を見て、視線に照れたように目をそらし、ハッキリと彼女が言った。
「そんなことより、テニスしている姿が格好いいなあって思ってたから」
「────」
「うわあ格好いいなあって。結果とか・・・あたしはルールもあまりよく知らないし、航君が残念な顔をしてたのは見たけど、それよりもその・・・テニスしてる姿を間近で見られて楽しくて」
彼女も勿論小声だった。
だけどちゃんと一文字だって逃さずに耳をダンボにして聞いた俺は、歓声が口から飛び出さないように片手で口元を押さえつけていた。
だって嬉しくて。
だってだってだって恥かしくて!
うひゃー!!格好いいだって!!
言った本人も照れていたけれど、もらった俺も真っ赤だったはずだ。手に感じる口元の肌の温度はかなり高かった。
彼女が恍惚としてみるものは、この世の中でたった一つ、夕日だけだと思っていた。
夢中で身を乗り出して見るものは、夕日だけだと。