コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
俺は照れくさかったから、彼女の方を見てなかった。だからちょっと不安になったのだ。相槌が全くなくて、もしかして一人でベラベラ喋ってる?って。
だから聞いた。聞いてる?って。しっかりと彼女を見て。
するとパッと顔を上げた彼女が、慌てたようにいきなり早口でまくし立てたのだ。
「へ?ええ、ああ、いや、はいはい、うんうん、聞いてるよ~、ちゃんと」
しかも、両手のジェスチャー付きで。バタバタと。
さっきまで静かだった人が、いきなり近所のおばちゃんみたいなノリの反応をした、俺はそれが面白くて、つい口の中で笑ってしまった。あはははは、何だ、急に軽いノリ。あははは、慌てたらこうなるんだ、この子。
だから言ってしまったのだ。佐伯さんてさ、って。話すとけっこう面白い人なんだなって。それには別に他意はなく、からかおうと思って言ったのではないのだ。あくまでも、つい出てしまった素直な感想だった。だけど、その一言が引き起こした反応は凄まじかった。
ぶわって音がしたかと思った。そんな素早さで彼女は真っ赤になった。
俺は一瞬呆気に取られてそれを見る。さっきまで確かに白かった頬のところや目の横辺り、赤くなって湯気が出そうな色合いだ。それは黒い髪に遮られてすぐに見えなくなったけど、俺の視界に残像となって残る。
笑いながら、驚いた。
もしかして佐伯って・・・・照れ屋?
俺がここに居なかったら頭抱えてジタバタしそうな雰囲気だった。
へえ、本当、案外おもしろい――――――――――――