コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
今日の昼休み、学生食堂前でばったりと出会った上田先生に捕まってしまったのだ。英語教師である上田先生が水泳部の顧問だってことは知っていたから、俺は咄嗟に逃げの姿勢をとった。
英語Bをとってない俺には会話などあるはずのない教師、それが上田先生だ。だけど今は、ちょっと逃げないと――――――・・・
だけど既に遅く、俺の右腕をガッチリ掴んだままで大きく笑った上田先生が持ち前の大きな声で言った。
横内、お前中学の時、バタフライで全国だったんだって!?って。
俺は一瞬目を閉じた。
『そんな水泳の逸材が、なんでうちの部に入ってないんだ!お前がこれば試合結果も明るくなるじゃないか!!もう2年だけど今からでも遅くないぞ、おい!』
って。
『お前今は何部だっけ?硬式テニス部?なんでそんな虚弱クラブにいるんだ、勿体無い!』
それから俺が返事をする間もくれず、放課後体育教官室へこい、と言ったのだ。叫び声に近い声量で。
俺は腕を離して欲しくて仕方なく頷いた。それから放課後になるのを待って、部活に参加せずに一人で体育教官室へと向かったってわけ。この夏休みに水泳部のメンバーとファミレスで出会ってしまったときに、しまったと思ったのだ。ああ、やべ、これってもしかして、バレるかもって。
予感は的中し、俺、横内航が中学生の時にバタフライで全国大会へいったことがある人間だとばれてしまった。あのファミレスで、たまたまうちの水泳部と一緒にいた他所の高校の水泳部のメンバーに顔見知りがいたのだ。お互いに中学時代の試合で顔見知りだったあいつは、確か水泳の強豪高に行ったはず。それが、どうして。