コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
とにかく、佐伯を気にすることはない。そう言い聞かせてみるのだ。一生懸命。そして、その一生懸命さに気がついて自分でわああああああ~!!って叫びたくなるんだった。
彼女の視線を気にしない、そんなことが出来る、佐伯という女子の存在を忘れることが出来るのは、やっぱり部活中だけだった。
ありがとう、テニスの神様。
しかも折りよく、丁度試合前。気合を入れて入れて入れまくるくらいで丁度いいって時期だったから、俺はもうやたらと集中しまくって部活に打ち込んだ。
授業中は隣の席が気になって眠れない。
いつも通りに寝たフリはしているけれど、前みたいに熟睡できない。
だってもしあの子の隣で寝言なんて言ってたらどうする?その中に彼女の名前が入っていたら、俺はどうしたらいいのだ!そんなのただの思春期変態野郎だろう~!そんなことになったら泣いても足りない、そう思うから、授業中には恐ろしくて眠れない。
だけどよりハードにクラブ活動には打ち込んでいて、しかも朝錬も昼練もある最近、家ではどれだけしんどくてもやらなければ地獄行きが確実の授業だってあるから、予習もしなくちゃならない。
もう俺はヘロヘロだった。
「なんか最近、航疲れきってねーか?」
お節介の幸田がそう言いながら昼休みの部活中に顔を覗き込んでくる。まだ若干熱い日差しがある天気の良い昼休みのコートで、ヤツはタオルでぐいぐいと顔を拭いていた。
俺はムスッとしたままでラケットでヤツの脚を叩いた。